はじめに

利息制限法の規定にもかかわらず、「有効な利息又は損害金の債務の弁済」とみなされるための要件は以下のとおりであり、このすべての要件を充足しなければ貸金業法43条の適用は受けられない。
要件事実の主張立証責任は、貸金業者側にある。

① 消費貸借契約(利息・損害金契約)の締結のときに貸主が貸金業者であること
② 業として行う金銭消費貸借上の利息または損害金の契約に基づく支払いであること
③ 利息制限法に定める制限額を超える金銭を
 a. 債務者が
 b. 利息または損害金と指定して
 c. 任意に
 d. 支払ったこと
④ 法17条の規定により法定の契約書面を交付している者に対する支払いであること
⑤ 法18条の規定により法定の受取証書を交付した場合における支払いであること

以上が法43条が適用される要件であるが、この要件をどのように適用すべきであるか争いがあったが、現在では厳格説が適用基準となっている。
以下要件の詳細を考察する。

第1要件・第2要件

第1要件は「貸主が貸金業者であること」である。
すなわち貸主が貸金業登録業者である必要がある。
これは監督官庁発行の登録に関する証明書で確認することとなる。
第2要件は「業として行う金銭消費貸借上の利息または損害金の契約に基づく支払い」であることである。
「業として行う契約」とは、同一形態の契約が反復継続して行われており、当該契約の締結が、社会通念上業務の遂行と一般に認められる形態であると解せられる。
ここにいう「利息」は利息制限法3条の規定により利息とみなされるものも含む。
同条にいうみなし利息とは、金銭を目的とする消費貸借について、貸主が礼金、割引金、手数料、調査料等の名目で受け取る元本以外の金銭をいう(利息制限法3条本文)。
ただし契約締結費用、弁済費用は除かれる。

債務整理ドットコムで借金問題を解決

債務整理ドットコムなら借金問題に強い弁護・司法書士が検索出来ます。
債務整理で借金問題を解決して、新しい人生を歩み始めましょう。
債務整理ドットコム[http://hensai-soudan.jp/]

第3要件

第3要件は「利息制限法に定める制限額を超える金銭を、債務者が、利息または損害金と指定して、任意に支払わなければならない」すなわちこの要件は四つのパーツからなる。
以下分説する。

「債務者」

「債務者」が支払うことを要する。法43条1項1号による支払いが、主債務者と保証人とを区別していないことから、ここにいう「債務者」には保証人も含まれる。
法律上支払義務のない親族等の支払いはどうか、法43条の文言からは、これを含まないと解釈するのが正当である。
では配偶者等が「債務者の名義」で支払った場合はどうか。
配偶者等第三者の出椙により「債務者の名義」で支払った場合、たとえ債務者からの委託があったとしても「債務者が支払った」とはいえず、法43条の適用はない。
したがって債務者の支払いであるかないかの判断基準は、債務者の委託、受取証書の債務者欄の記載を基準とするのではなく、誰の出椙により、債務が弁済されたかによる。

「利息又は損害金と指定して」

意義

「利息又は損害金と指定して」支払ったことを要する。
この点につき最高裁は、債務者が利息契約に基づく利息の支払いに充当されることを認識したうえ、自己の自由な意思によって支払ったことをいい、債務者が利息制限法に定める利息の制限額を超えていることあるいは当該超過部分の契約が無効であることまで認識していることを要しない、としている。

ATMによる支払い

ではATM(現金自動貸付返済機)による返済はどのように評価されるか。
この点につき、「利息として」または「賠償として」の支払については、債務者が利息契約に基づく利息または賠償額の予定に基づく賠償金の支払いに充当されることを認識していることを要するが、ATMによる返済では、債務者は支払いをする際に、利息や損害金の具体的額を知ることができないままに支払いを完了してしまい、利息または損害金への現実の充当額は事後的に認識し得るにとどまるのであるから、これをもって、債務者の支払金が、利息や損害金に充当されることについての認識があったと認めることはできないと判示し、控訴審においても維持された。
一方ATMを利用した支払いであっても、「貸金が一回の貸付であり、交付され口頭での説明も受けた貸付契約説明書及び金銭消費貸借契約証書には、元金の分割支払に伴う利息の具体的計算方法が明記され、交付された償還表には、予定どおり分割支払をした場合の毎月の利息額が明記され、しかも、支払金額が償還表より多い場合は、支払超過部分が元金に充当され早期に返済が終わることについても説明を受けていたのであるから、毎月の支払によっていくらの利息を支払うことになるかについて償還表の記載を目安として自ら計算して把握することは容易であったということができ、また、判示の事情がある場合には、自己の自由な意思によって利息の支払を行ったものということができる」と判示して法43条の適用を認めたものもある。
これら二つの判例は一見して相反する見解に基づいているかに思えるが、事案を検案すれば、同一の見解とする評価も可能である。
すなわち平成9年の東京地裁判決の事案は、包括的な貸付限度枠を定め、その範囲内で貸付け、支払いを繰り返し、しかもその支払形態は元利定額リボルビング払いによるものでありので、貸付額がそのつど変動し、しかも支払額は元利定額であるため、利息・損害金・元金に対する充当額の計算が極めて困難な事案であり、平成11年の東京高裁の事案は貸金は1回の貸付けであり、毎月支払う返済金の中から利息の支払いに充当される具体的な金額を容易に算出できる事案である。
したがって具体的な利息、損害金の額の認識の容易さが判断基準となっているという評価もできよう。

「任意に」

任意に支払うとは他人の強制などによらず、債務者が自己の自由な意思に基づいて支払うことと定義される。
したがって次の事由があれば「任意性」が否定され、貸金業法43条が適用される余地はなくなる。

取立規制違反の取立てによる支払い

その1は、貸金業法21条に違反する取立行為が行われた場合である。
21条1項は次のように規定している。

貸金業を営む者又は貸金業を営む者の貸付けの契約に基づく債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者は、貸付けの契約に基づく債権の取立てをするに当たって、人を威迫し又は次の各号に掲げる言動その他の人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない。
一 正当な理由がないのに、社会通念に照らし不適当と認められる時間帯として内閣府令で定める時間帯に、債務者等に電話をかけ、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の居宅を訪問すること。
二 正当な理由がないのに、債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所に電話をかけ、電報を送達し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者等の勤務先その他の居宅以外の場所を訪問すること。
三 はり紙、立看板その他何らの方法をもってするを問わず、債務者の借入れに関する事実その他債務者等の私生活に関する事実を債務者等以外の者に明らかにすること。
四 債務者等に対し、他の貸金業を営む者からの金銭の借入れその他これに類する方法により貸付けの契約に基づく債務の弁済資金を調達することをみだりに要求すること。
五 債務者等以外の者に対し、債務者等に代わって債務を弁済することをみだりに要求すること。
六 債務者等が、貸付けの契約に基づく債権に係る債務の処理を弁護士若しくは弁護士法人若しくは司法書士若しくは司法書士法人(以下この号において「弁護士等」という。)に委託し、又はその処理のため必要な裁判所における民事事件に関する手続をとり、弁護士等又は裁判所から書面によりその旨の通知があった場合において、正当な理由がないのに、債務者等に対し、電話をかけ、電報を送達し、若しくはフアクシミリ装置を用いて送信し、又は訪問する方法により、当該債務を弁済することを要求し、これに対し債務者等から直接要求しないよう求められたにもかかわらず、更にこれらの方法で当該債務を弁済することを要求すること。

これらに違反する行為による取立ては、当然に任意性は認められない。
また金融庁事務ガイドライン中3-2-6「取立行為の規制」には、より具体的に判断基準が示されている。
これら取立行為によってなされた支払いも当然任意性が否定される。同ガイドラインが示す判断基準は次のとおりである。

金融庁事務ガイドライン3-2-6 取立て行為の規制
法第21条第1項(法第24条第2項(法第24条の6において準用する場合を含む。)、法第24条の2第2項(法第24条の6において準用する場合を含む。)、法第24条の3第2項(法第24条の6において準用する場合を含む。)、法第24条の4第2項(法第24条の6において準用する場合を含む。)及び法第24条の5第2項(法第24条の6において準用する場合を含む。)において準用する場合を含む。以下3-2-6において同じ。)の規定に係る監督に当たっては、次に掲げる事項に留意するものとする。
(1) 法第21条第1項の「威迫」に該当するかどうかは、個別の事実関係に即して判断する必要があるが、例えば、貸金業を営む者又は債権の取立てについて貸金業を営む者その他の者から委託を受けた者等が、債務者、保証人等に対し次のような言動を行う場合、「威迫」に該当するおそれが大きいことに留意する必要がある。
① 暴力的な態度をとること。
② 大声をあげたり、乱暴な言葉を使ったりすること。
③ 多人数で債務者、保証人等の居宅等に押し掛けること。
④ 保険金による債務の弁済を強要又は示唆するような言動を行うこと。
(2) 法第21条第1項各号の規定は、「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」の例示であり、取立て行為が同項に該当するかどうかは、当該規定に例示されているもの以外のものを含め、個別の事実関係に即して判断する必要がある。当該規定に定める事例のほか、例えば、次のような事例は、「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」に該当するおそれが大きい。
① 反復継続して、電話をかけ、電報を送達し、電子メールを送信し、若しくはファクシミリ装置を用いて送信し、又は債務者、保証人等の居宅を訪問すること。
② 債務者、保証人等の居宅を訪問し、債務者、保証人等から退去を求められたにも関わらず、長時間居座ること。
③ 債務者又は保証人(以下3-2-6において「債務者等」という。)以外の者に取立てへの協力を要求した際に、協力に応ずる意思のない旨の回答があったにも関わらず、更に当該債務者等以外の者に対し、取立てへの協力を要求すること。
(3) 法第21条第1項第1号、第2号及び第6号に規定する[正当な理由]とは、個別の事実関係に即して判断すべきものであるが、例えば、以下のようなものが該当する可能性が高い。
法第21条第1項第1号
① 債務者等の自発的な承諾がある場合
② 債務者等と連絡をとるための合理的方法が他にない場合
法第21条第1項第2号
① 債務者等の自発的な承諾がある場合
② 債務者等と連絡をとるための合理的方法が他にない場合
③ 債務者等の連絡先が不明な場合に、債務者等の連絡先を確認することを目的として債務者等以外の者に電話連絡をする場合。
なお、この場合においても、債務者等以外の者から電話連絡をしないよう求められたにも関わらず、更に電話連絡をすることは「人の私生活若しくは業務の平穏を害するような言動」に該当するおそれが大きい。
法第21条第1項第6号
① 弁護士若しくは弁護士法人又は司法書士若しくは司法書士法人(以下3-2-6において「弁護士等」という。)からの承諾がある場合
② 弁護士等又は債務者等から弁護士等に対する委任が終了した旨の通知があった場合
(4) 法第21条第1項第4号及び第5号に規定する「みだりに要求すること」とは、個別の事実関係に即して判断すべきものであるが、例えば、以下のようなものが該当するおそれが大きい。
法第21条第1項第4号
債務者等から法第21条第1項第4号に規定する方法により弁済資金を調達する意思がない旨の回答があったにも関わらず、当該債務者等に対し、更に同様の方法により弁済資金を調達することを要求すること。
法第21条第1項第5号
債務者等以外の者から、債務の弁済に応ずる意思がない旨の回答があったにも関わらず、更に当該債務者等以外の者に対し、債務の弁済を要求すること。
(5) 法第21条第1項第4号に規定する「その他これに類する方法」とは、クレジットカードの使用により弁済することを要求すること等が該当すると考えられる。
(6) 法第21条第1項第6号に規定する「司法書士若しくは司法書士法人」に委託した場合とは、司法書士法第3条第1項第6号及び第7号に規定する業務(簡裁訴訟代理関係業務)に関する権限を同法第3条第2項に規定する司法書士に委任した場合をいう。

では貸金業法21条に違反した取立てに基づく当該支払いが任意性を欠くとしても、その後の全部の支払いも任意性を欠くといえるか。
その点につき、規制違反の取立行為とその後の支払いとの間に因果関係が認められれば、任意性を欠くと評価できる。
ここにいう規制違反の取立行為の対象は債務者のみでなく、債務者の意思決定に影響を及ぼすすべての人である。

公正証書による執行を免れる目的の支払い

消費貸借契約締結時または契約締結後、公正証書を作成され、公正証書による強制執行をおそれて支払った場合の任意性。
多数説は次のとおりである。公正証書の作成については、貸金業法43条の規定にかかわらず、制限超過部分の礼帽よ無効であることに変わりなく、公証人法26条により超過部分について公正証書を作成することができず、利息制限法の制限内に引き直された利息の合意しか記載されない。
したがって本来支払義務のある部分について強制執行の手段をとることは、当然の権利使といえるから、強制執行を避けるためにする支払いが直ちに任意性を欠くということはできない。
ただし、強制執行をいわば脅しの手段として使う場合、たとえば制限利息をもってきた者に、超過利息を支払わないと強制執行するといって超過利息を支払わせたような場合は任意性を欠くことになると考えられる。

約束手形等の不渡りを恐れての支払い

約束手形あるいは小切手を振出て借入れをした場合、一般的には「利息の天引」の任意性の問題として論ぜられることが多いが、約束手形は、支払期日に制限額を超える利息を含めて支払銀行の口座に入金しない限り、不渡り手形となり社会の経済的信用を失墜したこととなるので、支払いを強制されたことになり任意の支払いとはいえない。

利息の天引・前払いによる支払い

この問題に対しては法43条の適用を否定する多数の判例がある。
これら判例の要旨は、「利息制限法2条は、貸主が利息を天引きした場合には、その利息が制限利率以下の利率によるものであっても、現実の受領額を元本として同法1条1項所定の利率で計算した金額を超える場合には、その超過部分を元本の支払に充てたものとみなす旨を定めている。
そして、貸金業法43条1項の規定が利息制限法1条1項についての特則規定であることは、その文言上から明らかであるけれども、上記の利息制限法2条の規定の趣旨からみて、貸金業法43条1項の規定は利息制限法2条の特則規定ではないと解するのが相当である。
したがって、貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については、法43条1項の規定の適用はないと解すべきである」。
さらに実質的な理由として「天引き利息の支払は、貸付の条件とされているのが通常であり、利息を先払いするのでなければ貸付を受けられない状況で債務者が支払うのは任意の支払とはいえない」ことをあげている。
最高裁判所の判例が出て趨勢はほぼ定まったかに思われるが、参考として同一事例で法43条の適用を認めた判例を紹介しておこう。
サラ金側が主張してきた論拠が明白になるからである。

このページの先頭へ